ナス(茄子)のしくみを解説~葉っぱ・花・実のはたらき~

ナス(茄子)のしくみを解説~葉っぱ・花・実のはたらき~

「こびとの農園」は、“農作物の花”をモチーフにした、小さなつまみ細工を制作しています。

野菜や果物の花々は、ふだん目にする機会は少ないけれど、実はとても繊細で驚くほど美しい姿をしています。

夏野菜を代表するナスが、淡い紫色の可憐な花を咲かせるのをご存知でしょうか?

見慣れた野菜のなかには、まだ知らない“自然のひみつ”がたくさん隠れています。この記事では、そんなナスのからだのしくみや、それぞれの部分がどんなはたらきをしているのかを、ご紹介していきます。

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目次

ナスについて ~ナスって100品種以上あんねん~

収穫されるナス

ナス(学名:Solanum melongena)は、ナス科ナス属に分類される植物で、原産地はインド東部から東南アジアとされています。

日本へは奈良時代ごろに中国経由で伝わったと考えられており、『一富士、二鷹、三茄子』という初夢にまつわることわざや、お盆にナスで作る「精霊馬(しょうりょううま)」の風習など、古くから日本の文化や風習に深く根づいてきました。

暑さに強く、夏野菜の代表格として古くから全国各地で親しまれてきたナスは、地域の気候や栽培環境に応じて多様な品種が育まれています。

一般的に、南の地域では晩生で実の長い品種が多く、北の地域では早生で小ぶりな品種が多い傾向です。現在では在来種を含め、国内で栽培されているナスの品種は100種を超え、その特徴に応じて以下のように大別することができます。

種類特徴代表品種
中長ナスほどよい長さと太さ千両なす
黒福
長ナス全長20〜30cm前後で
細長い形状
筑陽
黒陽
丸ナス直径10cmほどの球形賀茂なす
越の丸ナス
小ナス・卵型ナス種少なく皮柔らか
漬物用に向く
民田
出羽小茄子
水ナス灰汁がほとんどない
生食に向く
泉州水ナス
千両水ナス
米ナスアメリカの大型品種ブラックビューティーの改良種くろわし
サラダムラサキ
白ナス果実が真っ白になるホワイトベル
味しらかわ
青ナス・緑ナス果実が緑になる緑美
埼玉青なす
ハナナス食用に向かない観賞用ナスフォックスフェイス
ソラナムパンプキン

ナスの葉っぱ ~葉っぱの紫色具合で元気か分かる~

アントシアニンで紫色になったナスの葉っぱ

ナスの葉は、ややとがった卵形または楕円形をしており、葉縁(ようえん)と呼ばれるふちの部分が波打っているのが特徴です。

葉の表面には細かな繊毛(トライコーム)が密生しているため、手ざわりはざらざらとしています。燥や過光、害虫に対する物理的・化学的防御として機能する重要な構造です。

アントシアニンの色素によって、葉脈や茎が紫色を帯びて見えることがあります。全体的に紫がかっているのは肥料がよく効いている状態でで、全体が薄く葉脈だけ紫色だと追肥が必要な状態です。アントシアニンは紫外線・低温・乾燥・栄養ストレスに対する保護機能を持ち、抗酸化作用と光の過剰吸収の緩衝材としても働くとされています。全体が過度に紫を帯びているときは、低温に遭遇した温度障害の可能性もあります(Zhang, S., Zhang, A., Wu, X., Zhu, Z., Yang, Z., Zhu, Y., & Zha, D. (2019). Transcriptome analysis revealed expression of genes related to anthocyanin biosynthesis in eggplant (Solanum melongena L.) under high-temperature stress. BMC plant biology19(1), 387.)。

ナスの葉は食用には向かず、大きく育った葉にはえぐみや苦味があり、そのまま食べると口あたりも良くありません。

ナスの花について ~咲いたら実がつく堅実な花~

ナスの花

ナスの花は、淡い紫色の5~7枚の合弁花が星のように広がり、中心にある黄色い「葯(雄しべ)」「柱頭(雌しべ)」の両方がある両性花であるのも特徴的です。

ナスの健康のバロメーターとして分かりやすく、状態の良いナスの花は柱頭が葯より長くなる「長花柱花」となりますが、柱頭が葯より短くなる「短花柱花」が現れると落花するなど問題が生じます。

花言葉は「つつましい幸福」「希望」「真実」「よい語らい」「優美」。華やかというよりは、控えめで、どこか奥ゆかしい印象の花です。

雄しべは通常5本あり、それぞれの花粉が柱頭に自然に付着しやすくなるよう筒状に融合しているので、「自家受粉」がしやすく、外的な媒介(風や虫)が少ない環境でも果実をつけることができます。「親の意見と茄子の花は千に一つも仇はない」と昔から言われている通り、なすびの花が咲くとあだ花(咲いても実を結ばない花)がなくすべて実をつけることで評価されるほどです。

ナスの実 ~濃い紫色は栄養豊富な証~

ナスときゅうりの精霊馬(牛馬)

ナスの紫紺色は、ポリフェノールの1種で強い抗酸化作用がある「ナスニン」です活性酸素を取り除く抗酸化作用があるため、がん予防・老化防止・糖尿病予防・免疫向上などの効果が期待できます。

ナスの実は、外果皮・中果皮・内果皮の三層構造のうち、中果皮と内果皮が多肉質・多汁質である果実「真正液果(漿果)」です。実の93%は水分で構成され、栄養成分や機能性成分が豊富に含まれています。

『秋茄子わささの糟に漬けまぜて 嫁には呉れじ棚に置くとも』という歌から「秋ナスは嫁に食わすな」という言葉が有名ではありますが、色々な解釈があり定説がはっきりしていません。

  • 身体を冷やすな説:東洋医学では体温を下げる効果があるため、嫁の体を案じたから
  • 嫁にはもったいない説:秋の茄子がシャキッとはぎれよくおいしいため、嫁に食べさすのはもったいないから。
  • 嫁がネズミ説:ネズミを忌み言葉で「嫁」とか「嫁の君」と呼び、おいしく栄養価の高い秋茄子をネズミが食べると増えて困るから

アルカロイド(灰汁)を多く含むので、水ナス以外は生食には適さず、加熱調理しない場合は漬物・マリネなどで食されます。

へたは茄蔕(かてい)と称して生薬になり、民間療法薬として使用されています。2024年1月には、ナスのヘタに含まれる天然化合物「9-oxo-octadecadienoic acid (9-oxo-ODAs)」が子宮頸癌細胞に対して抗腫瘍効果をもたらすことを、名古屋大学の研究チームの実験で明らかになりました(Mogi, K., Koya, Y., Yoshihara, M., Sugiyama, M., Miki, R., Miyamoto, E., … & Kajiyama, H. (2023). 9-oxo-ODAs suppresses the proliferation of human cervical cancer cells through the inhibition of CDKs and HPV oncoproteins. Scientific reports13(1), 19208.)

【ナスの注目成分】

  • βカロテン:100μg
  • 葉酸:19μg
  • カリウム:220mg
  • 食物繊維:2.2g

【ナス 可食部100gあたり成分 七訂日本食品標準成分表より】

最後に

ナスの葉・花・実

ナスのからだには、小さな姿からは想像もつかないほど、自然のしくみと命の工夫がぎゅっと詰まっています。

ナスの葉・茎・花・実、それぞれの特徴や役割を知ることで、ふだん何気なく見ている野菜にも、こんなにも繊細で豊かな世界が広がっていることに気づいていただけたのではないでしょうか。そんな自然の営みは、私たちのすぐそばにあって、ほんの少し立ち止まって見つめるだけで、たくさんの発見や感動を与えてくれます。

「こびとの農園」では、そんなナスの魅力を、つまみ細工という形でお届けしています。

身近な自然とのやさしいつながりを感じていただけたらうれしいです。

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