カカオのしくみを解説 ~葉っぱ・花・実・種のはたらき~ チョコレートの原料になる植物の不思議

「こびとの農園」は、“農作物の花”をモチーフにした、小さなつまみ細工を制作しています。
野菜や果物の花々は、ふだん目にする機会は少ないけれど、実はとても繊細で驚くほど美しい姿をしています。
カカオは、不思議な構造の白くて小さな幹生花を咲かせるのをご存知でしょうか?
見慣れた食べ物のなかには、まだ知らない“自然のひみつ”がたくさん隠れています。この記事では、そんなカカオのからだのしくみや、それぞれの部分がどんなはたらきをしているのかを、ご紹介していきます。
カカオについて ~カカオが希少品に戻る日も近い~

カカオ(加加阿)は、アオイ科の常緑樹である植物です。学名Theobroma cacao の Theobroma はギリシャ語で「神(theos)の食べ物(broma)」を意味する。マヤやアステカなど古代文明において、カカオ豆は飲料にされて飲まれたほか、神への供物とされたり、貴重品だったため貨幣としても用いられていました。「cacao」はアステカ王国で使われていたナワトル語でCacavaqualhitl(カカバクラヒトル)と呼ばれていたことに由来し、カカオの木をcacap(カカップ)とスペインに報告したことで、その文字が変化しcacaoになったと言われています。
年間平均気温が約27℃・年間降雨量1000mm以上・高度30〜300mの高温多湿の環境を好むため、赤道を挟んで南北の北緯20度から南緯20度の熱帯地域が「カカオベルト」として知られています。カカオの木は陰樹で他の木と混栽生育させる必要があるため、単一で大規模プランテーションでの生産ができないのが問題です。
現在栽培されているカカオの木の約8割は西アフリカ。カカオの品種は、主に3系統
- フォラステロ種(FORASTERO):世界の生産の80%。西アフリカを(ガーナ、コートジボワール、ナイジェリア)を中心に、ブラジルなどでも生産されていま。
- クリオロ種(CRIOLLO):栽培は非常に難しいが、花のような華やかで豊かな香りであることから、幻の「フレーバービーンズ」。中南米(エクアドル・メキシコ)で生産
- トリニタリオ種(TRINITARIO):ベトナム、ベネズエラ、トリニダード・トバゴ
異常気象(高温・干ばつ)による不作と病害(カカオ膨梢ウイルス病など)の蔓延、そして農家の低収入による投資不足で、将来的にはチョコレートが高級品化する「2050年問題」があげられています。
カカオの葉っぱ ~熱帯樹木らしい特徴~

カカオは常緑小高木で、葉は互生で、葉身は楕円形〜長楕円形、葉縁は全縁で光沢があります。陰樹なので、森林の下層で効率よく光合成できるために大きな葉(葉長20〜40cm)で、直射日光には弱いです。
強いスコールに適応するため、葉柄が長くよくしなって水を弾きやすいだけでなく、葉先が極端に細長く伸びる「ドリップチップ」で葉についた雨水などを素早く排水する、熱帯樹木らしい特徴があります。
カカオの花 ~不思議が詰まった不思議な花~

カカオの花は、植物の中でもとても不思議な構造をもつ花として知られています。私たちがチョコレートとして口にするカカオ豆は、この小さな花から始まります。
カカオの最大の特徴は、幹や太い枝に直接花を咲かせることです。この性質は「幹生花」と呼ばれます。花は直径およそ3cmほどで、白色から淡いピンク色をしています。細い枝ではなく幹から咲くのは、のちにできるカカオポッド(果実)が重いためで、幹から直接実ることで果実をしっかり支えることができます。

カカオの花の構造も非常に特殊です。花は5数性の対称構造をもち、花弁が5枚、正常な雄しべが5本、さらに仮雄しべが5本あります。この仮雄しべは花粉をつくらない特殊な器官で、花の中央にフード状の構造をつくります。大きな昆虫ではなく、超小型の虫しか入れない花構造になっています。この構造は、自家受粉(同じ花や同じ株の花粉で受粉すること)を妨げ、受粉昆虫の動きを誘導し、特定の小さな昆虫だけが受粉できるようにする役割を担っています。つまりカカオの花は、受粉相手を選ぶように精密に設計された構造をもっているのです。
カカオの花は原産地では1年を通して咲き続け、1本の木に年間数千の花をつけます。しかし実際に果実になる結実率は1%未満といわれています。成功率は極めて低いものの、大量の花を咲かせることで、わずかな結実を確保する戦略をとっています。
カカオの花言葉は「神聖」「親切」「とろける恋」です。小さく繊細でありながら、チョコレートという世界中で愛される食べ物を生み出す花にふさわしい言葉といえるでしょう。
カカオの実・豆 ~チョコレートの源~

カカオの果実はカカオポッド(cocoa pod)と呼ばれ、チョコレートの原料となるカカオ豆を守り包む重要な果実です。見た目はラグビーボールに似た独特の形をしており、長さはおよそ15〜25cm、重さは300〜500g前後になります。表面は硬く厚い殻で覆われ、縦に溝が入るのが特徴です。この丈夫な外皮は、熱帯の強い雨や衝撃、害虫から内部の種子を守る役割を担っています。
カカオポッドは、幹や太い枝に直接実る「幹生果」という性質を持っています。受粉してから成熟するまでには約5〜6か月かかり、その間にゆっくりと肥大していくのです。未熟な果実は緑色ですが、成熟すると黄色・橙色・赤色など、品種ごとに異なる鮮やかな色へと変化します。収穫期は産地の気候によって異なりますが、多くの地域では乾期と雨期に合わせて年2回の収穫が行われます。
果実の内部ははっきりとした三層構造になっています。最外層は厚い果皮で、物理的な衝撃や乾燥から内部を保護します。その内側には白く粘り気のある果肉(パルプ:Cacao pulp)が詰まっており、甘酸っぱい香りと強い糖分を含んでいます。そして中心部に20〜50粒ほどのカカオ豆 (cacao beans)が並びます。この種子がカカオ豆で、発酵・乾燥・焙煎という工程を経て、はじめてチョコレートの原料になります。
カカオが収穫されてからチョコレートになるまでの道のり・過程

カカオが収穫されてからチョコレートになるまでの道のりは非常に長く、複雑な工程です。
【カカオからチョコレートまでの道のり】
- 収穫:幹から直接ぶら下がる幹生果(カカオポッド)を収穫。
- 取り出し:白い果肉のパルプ(Cacao pulp)とカカオ豆 (cacao beans) に分離。
- 発酵:1週間程度かけて発酵・熟成。箱だけでなく、バナナの葉に包むことも。
- 乾燥:腐敗しないように水分が7〜8%以下になるよう調整。
- 出荷:カカオ豆のカタチで麻袋に詰められ消費国に出荷。
- 選別:生産国から仕入れた豆から悪い豆・ゴミなどの異物を除去。
- 焙煎:100〜140℃の熱を加え、香りを引き出す。豆のままの「豆ロースト法」以外に、分離後のカカオニブの「ニブロースト法」も。
- 分離:カカオ豆を砕いてシェルやジャームを取り除き、カカオニブを取り出す。種皮(シェル)、胚芽(ジャーム:発芽していく部分)、胚乳(ニブ:発芽の栄養分)
- 磨砕:カカオニブを磨り潰してペースト状のカカオマスを生成。
- 圧搾:カカオマスをプレス機で圧搾しココアバターを生成。ココアバターを除いた固形分(ココアケーキ)を砕いて、ココアパウダーを生成。
- 混合:カカオマスに砂糖・ココアバター・粉乳を混合。カカオマスを入れないとホワイト。
- 微粒化(リファイニング):なめらかな舌触りのため、ロールリファイナーという機械で挽き潰して、粒子を20μm以下まで微細化。
- 精錬(コンチング):コンチェという機械でチョコレート生地を長時間練り上げ、水分・酢酸が揮発し、ココアバターや植物油脂と混ぜて流動化。
- 調温(テンパリング):艶と口溶けのため、温度を調整(45℃→25℃→31℃)し、ココアバターの結晶を安定化。
- 充填・成型:振動を与え気泡を除きながら、チョコレート生地を型に流し込む。
- 冷却:チョコレートの表面が白くなったりざらついたりする「ファットブルーム」や「シュガーブルーム」という現象を防ぐために、適切な温度で冷やし固める。
- 型抜き:型を裏返し、チョコレートを型からはがす。
- 完成:倉庫の中で一定期間熟成(エージング)させてから出荷することも。
これだけの工程をかけてチョコレートができているかと思うと、板チョコ1枚でも非常に感謝して食べなくてはいけないなと感じます。
カカオ豆自体が国内でも流通しているので、豆からのチョコレートづくりも楽しいかもしれません。満天屋からカカオ豆から手作りチョコレートキットなども販売されているので、バレンタインデーやホワイトデーにカカオから作ってみるのも面白そうです。
最後に

カカオには、想像もつかないほど、自然のしくみと命の工夫がぎゅっと詰まっています。
カカオの葉っぱ・花・実・種、それぞれの特徴や役割を知ることで、ふだん何気なく食べているチョコレートにも、こんなにも繊細で豊かな世界が広がっていることに気づいていただけたのではないでしょうか。そんな自然の営みは、私たちのすぐそばにあって、ほんの少し立ち止まって見つめるだけで、たくさんの発見や感動を与えてくれます。
「こびとの農園」では、そんなカカオの魅力を、つまみ細工という形でお届けしています。
身近な自然とのやさしいつながりを感じていただけたらうれしいです。

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