サツマイモのしくみを解説~葉っぱ・つる・根・花・実・種のはたらき~

サツマイモのしくみを解説~葉っぱ・つる・根・花・実・種のはたらき~

「こびとの農園」は、“農作物の花”をモチーフにした、小さなつまみ細工を制作しています。

野菜や果物の花々は、ふだん目にする機会は少ないけれど、実はとても繊細で驚くほど美しい姿をしています。

サツマイモには、アサガオのような可愛い花を咲かせるのをご存知でしょうか?

見慣れた野菜のなかには、まだ知らない“自然のひみつ”がたくさん隠れています。この記事では、そんなサツマイモのからだのしくみや、それぞれの部分がどんなはたらきをしているのかを、ご紹介していきます。

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目次

サツマイモについて ~様々な資源活用がされる救荒作物~

サツマイモ

サツマイモ(Ipomoea batatas (L.) Lam.)は、ヒルガオ科サツマイモ属に属する多年性の草本植物で、肥大した塊根を食用とする代表的な作物です。日本をはじめ、アジア・アフリカ・南北アメリカなど世界各地で広く栽培され、主食や副食としてだけでなく、家畜の飼料、加工食品、さらには近年注目されるバイオエネルギー資源としても活用されています。

その起源は中南米にあり、特にメキシコから中央アメリカ一帯が原産地と考えられています。古代ペルーの遺跡からは、サツマイモを模した土器や綿布が出土しており、紀元前数千年前には既に栽培されていた痕跡が確認されています。日本には16世紀末から17世紀初頭にかけて中国を経由して沖縄へ伝わり、18世紀には青木昆陽が飢饉対策の救荒作物として普及に尽力しました。薩摩藩(現在の鹿児島県)を通じて全国に広まったことから「サツマイモ」と呼ばれるようになったのです。

栽培面でも特徴があり、窒素固定細菌との共生により養分の乏しい土地でもよく育ちます。連作障害が比較的少なく、育てやすい作物ですが、一方で窒素肥料が過剰になると茎葉ばかりが育ち、肝心のイモが肥大しにくくなる「つるボケ」という現象が起こりやすいことも知られています。

呼称については、漢字表記「甘藷(かんしょ)」が正式名称とされるほか、「唐芋」「琉球芋」といった異称も存在します。英語では “sweet potato” と呼ばれ、時に “yam” とも表記されますが、アフリカ原産のヤムイモとは別種です。

現在、世界全体では約4,000種類が栽培され、年間生産量はおよそ9,000万トンに達します。その中で日本の生産量は年間約70万トン(参照:令和5年産かんしょの作付面積及び収穫量_農林水産省)と限られていますが、約40品種が存在し、地域ごとに主力品種が分かれています。たとえば関東では「紅あずま」、関西や九州では「高系14号」が代表的な品種です。

サツマイモの葉っぱ・茎について ~力強く育ち、食べられる貴重な資源~

サツマイモの葉っぱ・茎 収穫の様子

サツマイモはつる性の多年草で、地面を這うように茎を長く伸ばしながら成長します。節ごとに根を下ろす力が強く、その旺盛な生命力によって比較的痩せた土地でもよく育つのが特徴です。地面に接触して「不定根」を伸ばしてつる根イモを発生させるのを防ぐため、つるを株元から持ち上げ、畝(うね)の上にひっくり返す「つる返し」を行います。

葉形は丸形、ハート形・槍形など品種によって多様で、切れ込みも深いものから浅いものまであります。安納芋は新芽は紫っぽく、シルクスイートは緑っぽいなど、品種の特徴が色濃く出ます。緑が一面に広がる畑の風景は、夏から秋にかけてまるで緑のじゅうたんのようです。

サツマイモといえば塊根が食材としてよく知られていますが、実は柔らかい葉や茎も古くから食用にされてきました。若葉や若いつるはアクが少なく食べやすく、ヒルガオ科のクウシンサイに近い風味を持っています。炒め物にするとシャキッとした食感が楽しめ、佃煮おひたしにすればご飯のお供になります。さらに、刻んでかき揚げに加えるなど天ぷらの素材としても活用でき、家庭料理や郷土食の中で親しまれてきました。こうした利用方法は日本だけでなく、フィリピンや台湾などアジア各地でも一般的で、サツマイモは根だけでなく葉や茎も含めて無駄なく使える優れた資源作物といえます。

サツマイモの根(芋)について

サツマイモの根(芋) 色ごとの種類

サツマイモの食べられる部分である塊根は、地中で養分をため込んで肥大した根の一部です。一般的に「芋」と呼ばれていますが、ジャガイモのような茎の塊茎ではなく、根が養分を貯蔵して太ったものにあたります。同じ「いも類」という括りで扱われながらも、植物学的には成り立ちが異なります。

塊根の姿かたちは品種や育つ土壌条件によって大きく変わります。細長い形をしたものから丸みを帯びたものまで幅広く、外皮の色も赤紫色・黄褐色・淡いベージュ色など多彩です。さらに中の肉色も個性があり、白色・淡黄色・オレンジ色・紫色などが存在し、栄養価や見た目の美しさにも直結しています。

味わいの変化もサツマイモならではの魅力です。収穫直後はデンプン質を多く含んでいるため、火を通すとホクホクした食感が強く出ます。しかし、一定期間保存しておくと内部の酵素が働き、デンプン質が糖分へと分解されていきます。その結果、ねっとり感と自然な甘みが増し、焼き芋やスイーツにすると濃厚で奥深い風味が楽しめます。収穫後にしばらく熟成させて出荷される「寝かせ芋」は、この甘さを最大限に引き出したものとして特に人気です。

また、サツマイモはレジスタントスターチを含み、「低GI食品」と表現されることがあります。いったん冷やしたものを再加熱してもレジスタントスターチは大きな減少をしないので、冷蔵・冷凍保存しておいたものを再加熱して食べるのがおすすめです(亀井 文 高橋 遥,“さつまいもの加熱調理直後、冷蔵保存及び再加熱によるレジスタントスターチ量の変化”,宮城教育大学紀要,53,2019,211-216)。最近は冷凍焼き芋などが売られているので、気軽に栄養を摂取できます。

栄養面に目を向けると、サツマイモはビタミンCを豊富に含む優れた食材です。しかもデンプンに守られているため、加熱調理しても壊れにくく効率的に摂取できます。加えて、不溶性・水溶性の両方の食物繊維をバランスよく含み、腸内環境を整える働きがあることから便通改善にもつながります。

さらに、サツマイモを切ったときににじみ出る乳白色の液体には「ヤラピン」と呼ばれる成分が含まれています。整腸作用があるとされる成分で、食物繊維とあわせて摂取することで腸の動きを促し、よりスムーズなお通じを助けます。つまりサツマイモは、甘さと食べごたえを備えた作物であると同時に、体の調子を整える機能性食品としての側面も持ち合わせているのです。

【サツマイモの注目成分】

炭水化物:33.7g
ビタミンC:20mg
葉酸:54μg
カルシウム:40mg
カリウム:390mg
食物繊維:3.8g
【さつまいも 皮付き蒸し 可食部100gあたり成分 七訂日本食品標準成分表より】

サツマイモの花について ~花言葉の通り、滅多にお目にかかれない幸運な花~

アサガオのようなサツマイモの花

サツマイモの花は、畑で出会えることがごくまれで、栽培していても滅多に見られない珍しい存在です。開花には限られた条件が必要で、日本の気候では花が咲いたとしても実になることはほとんどありません。そのため、長年サツマイモを育てている農家さんでさえ「実物の花を見たことがない」という声が少なくないのです。

花はヒルガオ科らしいラッパ型で、アサガオによく似ています。色合いは淡い紫色から赤紫色まで幅があり、中心に向かって濃くなるグラデーションが印象的です。早朝に開花して日中のうちにしぼんでしまう一日花で、その短い命がかえって可憐さを際立たせています。

サツマイモの花には「乙女の純情」「幸運」という花言葉が添えられています。普段は目にすることが難しい希少な花だからこそ、その清らかで愛らしい姿に、人々は純粋さや幸福のイメージを重ね合わせてきたのかもしれません。

サツマイモは高温短日性の植物で、本州など温帯地域ではなかなか花をつけません。日日が短くなっても気温が下がってしまうため、条件が整わないのです。強い環境ストレスを受けたときにまれに開花することはありますが、日本で比較的安定して花が見られるのは沖縄など一部の地域に限られます。

このような特性から、日本での栽培では種子ではなく、つるを切って植え付ける「つる苗」による栄養繁殖が主流となっています。花や果実は、食用や栽培上の利用はほとんどなく、農業生産においてはほとんど利用されていません。

サツマイモの実・種について ~知られざる繁殖のかたち~

引用:サツマイモができるまで_農林水産省

サツマイモの実はとても小さく、直径1センチほどの丸い果実として育ちます。熟すと硬い殻の中に黒く光沢を帯びた種子をいくつか宿し、その姿はヒルガオ科の植物らしい特徴を示しています。ただ、日本の気候では花そのものがめったに咲かないため、結実まで至ることはさらにまれで、農家でも実を実際に目にすることはほとんどありません。

一方、原産地の中南米や熱帯・亜熱帯地域では比較的結実しやすく、その種子から新しい株を育てることも可能です。育種の現場では、サツマイモをアサガオなどの近縁種に接ぎ木して開花を促し、そこから種子を採取する方法も行われています。

しかし農業生産の観点からは、種子繁殖はあまり実用的ではありません。発芽に時間と手間がかかるうえ、親と同じ性質を必ずしも受け継がないため、安定した栽培には向いていないのです。そのため、現在の栽培では前年の芋から芽を出させ、そのつるを切って植える「つる苗」による栄養繁殖が主流となっています。この方法であれば、同じ品種を効率的に増やすことができるため、広く定着しているのです。

最後に

サツマイモ 畑で収穫

サツマイモのからだには、小さな姿からは想像もつかないほど、自然のしくみと命の工夫がぎゅっと詰まっています。

サツマイモの葉っぱ・つる・根・花・実・種、それぞれの特徴や役割を知ることで、ふだん何気なく見ている野菜にも、こんなにも繊細で豊かな世界が広がっていることに気づいていただけたのではないでしょうか。そんな自然の営みは、私たちのすぐそばにあって、ほんの少し立ち止まって見つめるだけで、たくさんの発見や感動を与えてくれます。

「こびとの農園」では、そんなサツマイモの魅力を、つまみ細工という形でお届けしています。

身近な自然とのやさしいつながりを感じていただけたらうれしいです。

つまみ細工「サツマイモ(紅はるか)のピアス・イヤリング」アイキャッチ
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コメント

コメント一覧 (2件)

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