つまみ細工について ~歴史・技法の分類・素材と道具~

つまみ細工は、日本に古くから伝わる繊細な布工芸の一種で、主に江戸時代の宮廷文化や町人文化を背景に発展してきた伝統技法です。
現代では七五三の髪飾りや成人式の簪(かんざし)などに多く見ることができます。
『こびとの農園』で使用しているつまみ細工に関する、歴史的背景・技法の分類・素材と道具について、ご説明します。
つまみ細工の起源と歴史

つまみ細工は、正方形に裁断した薄布を折りたたみ、布端を「つまむ」ことで花鳥風月の文様を作る日本独自の工芸技法です。
一般社団法人つまみ細工協会によると、つまみ細工の歴史は約200年前に遡るとされ、東京都の伝統工芸に指定されています。
つまみ細工の歴史は約200年前、宮中の女官や大名の奥女中が趣味として楽しんでいた『和小物』の技法が始まりです。
引用:一般社団法人つまみ細工協会「つまみ細工とは」
後に町人文化の成熟とともに庶民の間にも広がり、女性が髪飾りや祝いの場で用いる装飾として「つまみ簪」「花簪」と呼ばれ、季節の花や動植物を模したつまみ細工が流行した。
季節を愛で自然を尊ぶ「日本人の美意識」が、江戸時代から現代まで多くの人々に受け継がれ、今なお愛され続けています。
つまみ細工技法の分類

つまみ細工は、折りたたんだ布を接着剤で固定し、組み合わせて立体的な形状を形成します。
技法はシンプルな構造を持ちながらも、折り方の違い、組み合わせ、配置により多様な表現が可能です。
折り方の基本技法
つまみ細工の基礎は、以下の2種の「基本つまみ」に分類されます。
- 丸つまみ
- 剣つまみ
丸つまみ
丸つまみは、布の四隅を中心に向かって折りたたむことで、丸みを帯びた花弁を表現することができる最も基本的な技法です。
花弁の重なりを均整を整えることで、シンメトリックな美しさが出ます。
剣つまみ
剣つまみは、布の2辺を中央に向かって対角に合わせて折ることで、先端が尖った形状をつくる技法です。
丸つまみよりも張りが出るため、強い印象の花に適するシャープで立体的な表現ができます。
折り方の応用技法
大小異なるサイズや色の布を重ねて折ることで、色彩の層をつくり、花に深みと立体感を与える技法があります。
- 二重つまみ:異なる布を重ね、花弁にグラデーションや立体感を与える。
- 重ねつまみ:一つの花弁に同種複数枚の布を使い、構造的厚みと色彩の変化を出す。
- 菱つまみ:剣つまみをさらに折り込む。
- ひだつまみ:中心のひだをふやす。
- 裏切り:裏側をカットして角度を減らす。
- 裏返し:表側をくるりとめくって返す。
構成技法
単一の花弁だけではなく、配置・重なり・方向の組み合わせによって作品全体の印象をコントロールします。
- 一重咲き:同サイズの花弁を等間隔に放射状に配置した基本構成。
- 二重・三重咲き:大中小の花弁を層にして重ねることで、豪華で立体感ある表現に。
- さがり(垂れ):小花や葉を糸や紐で連結し、簪などの垂れ飾りにする。
つまみ細工に使用される素材と道具

つまみ細工に使用される材料は、選ぶ素材によって作品の印象・難易度・耐久性が大きく変わるため、目的やコンセプトに応じた最適な組み合わせが求められます。
伝統素材であればあるほど表現に深みが出る一方で、現代的素材を取り入れることで自由な創作の幅が広がるのも、つまみ細工の魅力のひとつです。
生地素材
つまみ細工で使用される生地素材は、繊細に折る・つまむ・重ねるという工程に適した、張りとしなやかさのある薄手素材です。
現代のつまみ細工は、羽二重だけでなくちりめんやコットン等水分を吸う素材でしたら使用できますので、幅広く様々な作品が見受けられます。
- 羽二重(はぶたえ):つまみ細工において最も伝統的な素材。絹100%で光沢と滑らかさがあり、細部の表現に優れる。
- 一越ちりめん:表面に独特のしぼ(凹凸)がある。色の染まり方に深みがあり、温かみのある質感を表現可能。
- 二越ちりめん:しぼが粗いが、ふんわりした質感になる。
- ポリエステルちりめん(合成ちりめん):扱いやすく、耐久性が高いため現代では主流。
こびとの農園では、コットン100%の綿布を使用し、自然な風味を引き出しています。
道具
つまみ細工を支える道具は多くあります。
- ピンセット:先端が細く、フラットになっているものがつまみ細工に最適
- 接着剤:木工用ボンドまたはでんぷん糊
- 作業台:滑りにくいフェルトやシリコンマット
- 裁断道具:カッター、定規、糸切り鋏
- 台座:金具、Uピン、ブローチピンなどの接合パーツ
まとめ

つまみ細工は、布一枚とピンセットから始まる、奥深い工芸の世界です。
手仕事から生まれる表現には、四季や自然に寄り添う日本人の感性が詰まっています。
「こびとの農園」では、つまみ細工の技術を単なる装飾ではなく、“農作物の花”を伝える媒体として位置づけ、暮らしに彩りを添える、ひとつひとつの作品に込めています。
身につけるたびに、自然と笑顔がこぼれるような、そんな作品をお届けできたら幸いです。
ぜひオンラインSHOPを除いてみてください。
コメント